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4. 陣痛 その後、 陣痛室に案内されたあたしは、 まず、陣痛計で陣痛の具合をみてもらうことに。 臨月の検診で体験したNSTと同じ要領で、 40分間、おなかに聴診器みたいな機械をつけていなきゃならなくて。 陣痛に耐えながらのこれがなかなか、キツい…。 痛くても自由に体勢を変えられないから、 ただ、体を仰向けに伸ばした状態で、痛みと向き合うしかない。 …けれど、 この時のあたしはまだまだ余裕があって、 旦那さんと母に、 「これがピュッチの心音だよ」 なんて、教えたりしていた。 この頃の陣痛は5〜7分間隔。 生理痛のような痛みがじわじわと湧いてきたと思うと、 徐々に徐々に強くなる。 どこまで強くなるのか、目をつむって静かに耐えていると、 やがて、痛みはピークを過ぎて下降する。 そして体はまた痛みから解放される。 …これが陣痛。 でもまだ、これくらいの痛みなら全然ガマンできる。 だって、陣痛の合間に、 『いつ頃産まれるんだろうね』 なんて、笑顔で話をする余裕があるのだから。。 ―午前4時。 助産婦さんにうながされ、 旦那さんと母は、一時帰宅することに。 陣痛室にひとり残されたあたしは、 もちろん出来るだけ睡眠をとるように言われたのだけど、 …やっぱり…痛くて眠れないよ…。 意識は眠りに入ろうとするんだけど、 陣痛がくる度に、いちいち目が覚めるの。 …結局、朝方までこんな調子。 ―午前6時。 助産婦さんがやって来て、検温と、再度陣痛計による測定が行われる。 眠れましたか? と聞かれ、ダメでしたと答えると、 「ウトウト出来たなら、それだけでもいいんですよ」 とのこと。 なんとなくエネルギーを貯えられた気がして、 ほっとしました。。 ―午前7時半。 朝食が運ばれてくる。 納豆だけを残して、ほとんど全部食べた。 ピュッチとママ、二人分の栄養補給だもんね。。 ―午前8時半。 院長先生による内診があるため、また昨夜の分娩台に移動。 …子宮口、あれからもっと開いているといいな…。 足を開き、体をこわばらせて先生を待っていると…、 先生の到着とともに陣痛の波が! 「陣痛来てますか?」 先生の問いに、 「…今…」 痛さで声を絞って答えると、 なんと、その瞬間に内診! 痛たたたた…!!! …どうやら、陣痛がきた時に内診するのが普通なのかな? (その後の内診もそうだったから) でも…それってやっぱりちょっと辛いよね。 …先生が内診の結果を教えてくれる。 「まだ開きは3cmぐらいだね。でもだいぶ子宮口が薄くなってるから、いい陣痛がくれば早く開くかも」 …3cm! 喜ぶべきかガッカリするべきか…、 でも…昨夜よりは開いてるんだから、 よしとしなくちゃいけないのかな。 昨夜の陣痛に耐えはじめてからまだ10時間弱しか経っていないというのに、 あたしは早くも、 『この痛さから解放されたい!』 と思いはじめてる。 こんなんじゃダメだね。 まだまだ、 あと7cm開かなきゃピュッチには会えないんだから。 ―午前9時過ぎ。 母と旦那さんが再び来てくれた。 昨夜は結局全然眠れなかったことを告げると、 二人はすごく親身に心配してくれる。 …ありがたいな。 みんなが、ピュッチが一緒なんだから、 あたしはきっと、頑張れるよね…! ―10時過ぎ。 痛みがだいぶ増してきた。 呼吸を整えてリラックスしないと、 痛みを散らすのがかなり難しくなってくる。 …更に陣痛計には痛みの強さを表す数値が表示されていて、 この頃からかな? 旦那さんの、 「…また痛くなってきたね…」 のひと言にカチンときたりして…。 なんとなく、精神的な余裕が無くなりはじめてる。 ―12時半。 お昼が運ばれてきたけれど、 デザートの豆腐チーズケーキ以外はほとんど食べれない。 メインはけんちんうどんだったかな? 旦那さんにたいらげてもらう。 陣痛椅子、座る、寝転がる、 いろいろな体位を試したけれど、いいカタチが見つからない。 個人的には腰をさすってもらっても効果があまり感じられなくて、 かえって母や旦那さんに気を遣わせてしまったっけ…。。 ―15時。 お義母さんが来てくれて、付き添いを母と交代する。 陣痛の間隔は5分より一向に縮まらない。 痛みは今朝よりも更に増したように感じて、 部屋にあるトイレに行くのさえかなりキツい。 昨夜からの睡眠不足で頭がぼうっとする…。 …いつまで痛いんだろう。 …今、子宮口はどのくらいまで開いたんだろう。 痛みがくる度に旦那さんの手をぎゅっと握りしめる。 痛くて痛くて…。 本当は旦那さんと夫婦だけの会話もしたかったんだけど、 お義母さんの手前だし…、 あたしはぐっと我慢した。 ―夕方5時頃。 助産婦さんに内診してもらう。 …しかし、 あたしの祈りむなしく、子宮口は3.5cmくらいとのこと。 朝から、0.5cmしか開いてない…。 正直、愕然とした。 痛みは、確実に強くなっているのに…。 「まだまだかかるかな…。もっともっと痛くならないと、赤ちゃんは出てこないの。大丈夫、頑張って!」 助産婦さんの言葉も、笑顔も、すごくありがたいな、と感じたけれど、 頭の真ん中には入ってこなかった。 …今でもこんなに痛いのに、辛いのに、 もっと痛くなるの…? 何よりおなかがこんな状態で、 ピュッチが苦しい思いをしていたら…。 でも頑張らなくちゃ…。 みんな産んでるんだもん。 友達だって妹だって、お母さんだって、 みんなみんな産んだんだもん…。 あたしだけ産めないなんてことはない。 ―午後6時半。 夕飯が運ばれてきたけれど、 全く食べる気にはならなかった。 食欲はむろん、 髪型や顔なんかも、どうでもいい。 ピュッチに会うための試練だと思い、 ただひたすら一生懸命に陣痛を受け入れようと試みるけれど、 痛みのピークは容赦なくあたしの考えうる限界値を超えていく。 旦那さんとお義母さんが夕飯を少しでも食べるよう促すけれど、 あたしはもう、声を発することもままならなくなっていた。 痛みが急激に加速し、持続時間も長くなる。 …おかしい。 さっき内診で3.5cmだと言われて間もないのに、 陣痛の間隔も、1〜2分になっている。 何も考えられない。 …でも、ただ無我夢中で、 痛みが去るまでピュッチの事を考えようとした。 向かいのナースステーションからは、 今日退院するらしい家族の笑い声が聞こえる。 …うらやましいな…。 あたしも早く産んで、ピュッチと家に帰りたい…。 …すると突然、 陣痛のピークに、子宮がとんでもない力で波打ち始めた。 次へ>> |





