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1. もう一人の家族に会うために ―1月16日、夜8時過ぎ。 お腹に40週3日になる赤ちゃん(チュッちゃん)を抱えたあたしは、 午後3時くらいから、5〜7分間隔の腹痛を感じ、 旦那さんと、2歳3ヶ月の長男・風友と一緒に、 入院用の荷物を車に積んで産院に向かっていた。 「…いよいよだね、いよいよだね…」 …見慣れた町並みを車の窓から眺めながら、 あたしは、深呼吸をするようにそうつぶやいた。 「…うん、いよいよだね…」 今は特に面白い返事はくれないだろうと解っていたけれど…、 旦那さんも、やっぱり緊張しているのかな? ただただ、落ち着かなそうにハンドルを握っている。 「…かざちゃん、ママ、頑張って来るからね…」 あたしは、一緒に後ろに座っている風友をぎゅっと抱き寄せた。 …もちろん、これから起きる事なんて、想像さえしていないみたい…。 「…あ、ピーポー、いた!ピーポー…!」 まだまだ幼い風友は、普段通りに警察署のパトカーを見て喜んでいる。 暗い車内でも、頬が紅潮している事がわかる。 その笑顔の、なんて愛しいことか…。 …あたしは、涙ぐむのをぐっとこらえて横顔を見つめた。 チュッちゃんを産んだら、5日間は入院しなければならない。 一晩たりともあたしと離れて眠った事がない風友に、 寂しい思いをさせてしまう事が…ただひとつの気がかりだった。 でも…。 あたしはこれから、もう一人の家族に会うために産院に行く。 風友には弟が、 あたしと旦那さんには、もう一人の可愛い息子が出来るんだ。 …2年ぶりの出産は、やっぱり怖くてたまらないけれど、 今はもう、 『早く会いたい』 その気持ちが先行して、 痛みに立ち向かうための盾となり、あたしを守ってくれている。 だから大丈夫、頑張れる。 頑張らなきゃ…! …ぬくもりを確かめるかのように、 あたしは、 何度も何度も風友を抱き寄せた。 そしてお腹には、愛しいチュッちゃん…。 …お腹にチュッちゃんがいるこの瞬間の事を、 あたしは、出来る限り忘れないでいたい…。 そう思ったからかな。 産院に向かう、この車中での感覚は、 今も鮮明に、あたしの記憶に残っています…。 次へ>> |





