マタニティな日々と、ママの日々 ananが妊娠について学んだこと ananの妊婦なイラスト トップページへ戻る

ananにとって二度目の出産となった、暁希の出産記です。
風友の時よりも冷静に挑んた分、長くなってしまいましたが、
読んでいただければ嬉しく思います…。

  

    






7. 陣痛との闘い


―正午。

陣痛は、5分間隔のまま続いていた。

少しずつ…、
このあたりから、持続時間が長くなってきたようだった。

旦那さんがお昼ご飯を買いに出ていた頃、
あたしも、入院食の親子丼を食べながら母とたわいのない話をしていたけれど、

痛みが来ると、ちらすのが少し難しくなり、

箸をとめて、うつむいて、ぐっと我慢をするようになった。

食欲もわかない…。

『朝から動いてないからかもね』

なんて母と話したけれど、

陣痛の痛さが増して、
いよいよかな…と考え始めると、

とても…、ご飯を味わって食べる気分にはなれなかった。


―12時半頃。

痛みが増してきた。

この頃まではずっとベッドの上で女の子座りをしていたけれど、

急に疲労感を感じて、ベッドに横になることにした。

「痛くなるとあたし、話さなくなるからね、ごめんね…」

付き添ってくれる母に申し訳なくて、

あたしは前もってそう告げた。

…どうしよう、痛い…。

決して口には出さないけれど、

陣痛のピークが来ると…、下腹部は割れるように痛くなった。

暑さを感じてきたのも、この頃だった。

暑くて、ふとんから足を投げ出すけれど、やがてすぐ寒くなる。

「…寒くないの?」

母がふとんを掛けてくれようとしたけれど、

陣痛の最中だったあたしは、無言でそれを制止した。

…やがて、旦那さんがおにぎりを買って帰って来る。

「…どっち食べます?」

旦那さんが母に聞くと、
好きな方を食べて、と母は答える。

二人がそんなやり取りをしているのを、

あたしはベッドに横たわったまま、ただただ無言で聞いていた…。

そして…、

13時を過ぎた頃から、痛みは更に本格化してきた。

『こんな痛さだったな』

と、思い出す…。

陣痛の合間は嘘のように痛みが引くのに、

一旦痛みが来ると徐々に強くなり、

自分が考えうる痛さの限界なんて、容赦なく越えてゆく。

身の置き場がないと感じた。

体の内側から引き裂かれるような痛みに指ひとつ動かせず、

耐えるどころか、
呼吸をするだけで精一杯だった。

…凄まじい痛み。

「…かなり痛い………」

あたしの様子を固唾を飲んで見つめている母と旦那さんに、あたしはそう告げた。

お産が2回目の今回、

あたしはこの痛みを冷静に味わっていた。

こんな程度じゃ、まだ産まれない…。

それが分かるから、尚更先が見えなかった。

早く産んで楽になりたいのに…、

次の段階に行く為のハードルは、限りなく高いものに思えた。


―14時過ぎ。

助産婦さんが内診に来てくれた。

旦那さんと母が一時退室すると、

その若くて可愛らしい助産婦さんは、

「痛いですか?…痛みが無くなってからでいいですよ…」

と、あたしの陣痛が去るのを待ってから内診してくれた。

結果は…3.5cm。

「開きは3.5cmですが、だいぶ子宮口がぺらぺらになってきているので、これからの開きは早そうですよ、…頑張ってください」

助産婦さんはそう言うと、続いて隣の妊婦さんの内診へと移って行った。

…風友の時と同じ。

朝からは、0.5cmしか開いていない…。

…あたしは、『やっぱりそうか』と思った。

経産といえど、
自分のお産がそんなに簡単に進むとは思っていなかった。

でも風友の時は、この後一気に8cmまで開いたのだから…と、前向きに考えもした。

「これからきっと、一気に開くよ」

母も励ましてくれる。

頑張らなくちゃ…。

「フー、フー、フー…」

…痛みが来ると、
あたしは呼吸法の効果を信じて、大きく息を吐くことに集中した。

『チュッちゃん、風友、チュッちゃん、風友…』

心の中で、ひたすらそう繰り返す。

いつしか、陣痛の間隔は2分くらいになっていた。

合間に精一杯体を休めるけれど、
またすぐ次の痛みがやってくる。

陣痛が来なければお産が進まないのは解っていたけれど、

次の痛みが来るのが怖くて、

お願い来ないで、
お願いだからまだ来ないでと、

裏腹に願った。

…枕元にいた旦那さんの手を、すがるような思いで握る。

彼がウトウトしているのは解ったけれど、構わないと思った。

汗ばむ手のひらで、
彼の手が砕けてしまうのではないかと思うくらい強く握った。


…どのくらい経っただろう。

突然…、
陣痛と共に産道が大きく波打った。

…ついに来た!と思った。

要するに、『いきみ』を感じてきたんです。
(痛みで体のどこにも力を入れたくはないのですが、強いて言うならば…便を踏ん張って出したくなる感じと似ています)

風友の時は、
このいきみたくなる感覚を感じてから1時間しないで分娩台に上がったので、

二人目は展開が早いと言うこともあり、
母に頼んで、看護婦さんを呼んできてもらった。

「…ちょっと触りますね…?」

看護婦さんはそう言ってあたしの会陰に手を当てると、
陣痛が去るまでその体勢のまま、何かを確認しているようだった。

そして手を離すと…、

「…全開に近くなると、もっとここが『ぐぐっ』と押される感じがするので、まだですね…。もう少し我慢してくださいね」

そう言ってあたしを気遣うと、去って行ってしまった…。

…早合点をしたみたいで、あたしは恥ずかしかった。

「内診してもらえなかったね…」

母は残念そうに言ったけれど、

仕方ないよ…と、あたしは小さく返した。

ここからが、本当の闘いだった。


…陣痛は更に持続時間が長くなり、

痛みが引かず、あたしは苦悶の表情を露わにした。

そして、
いきみを逃すため…とゆうか、

例えるなら、
チュッちゃんがまだ出てこないよう、お尻にぐっと力を込めるのだけれど、

強烈な痛みの中では、
それが信じられないくらいに辛く、負担だった。

試しに母にお尻の辺りを押さえてもらったけれど、

押さえる力が足りず、
その事を伝える余裕もなく、

やっぱりいいよ…と、母の手を払った。
(ごめんなさい…)

チュッちゃんと風友の名前を頭の中で呪文のように繰り返しながら、

あたしはひたすら旦那さんの手を握り、呼吸することに集中していた。

けれど…、
ふいに我慢の限界を感じて、

「んー、んー…!」

と、声を出してしまった。

…カーテン越しには、初産の妊婦さんがいる。

怖がらせてはいけないのに…。

けれど更に…、

「大丈夫?いきんじゃダメなんだよ」

あたしがいきんでいると勘違いした母の言葉に、

「…違うの、いきまないように我慢してるの!」

思わず口調を荒げてしまった。

抑制が利かない。

『こんな痛さを忘れていたなんて』

…案外楽に産めるかも…と、
少しでも思った自分が甘かった。

暑くて痛くて、

少しでも、時計の針が早く進むよう祈った。


…その時、

「…どうですか?いきみたいですか?…内診しましょうね…」

助産婦さんが内診に来てくれた。

けれど…、
この時のあたしは、内診のために体勢を変えることさえキツかった。

情けないと思いながらも、動くのを渋っていたら、

助産婦さんの気遣いで、横を向いたまま内診をしてくれた。

「フー、フー…、…」

あたしはきっと、ひどい顔をしているのかな…。

…こんな時に外見を気にする自分はおかしいと考えながらも、

あたしは少し冷めた思いで、助産婦さんの言葉を待った。

…内診を終えた助産婦さんは、一呼吸置く。

そして、

「……。一気に9cm、分娩台に行きましょう!」

真っ直ぐにあたしを見てそう言った。

…。

9cm…?

「………はい」

答えながら、あたしはかすかな安堵感に包まれた。

…もうすぐ、チュッちゃんに会える…。

これから更なる痛みと闘うことになるのは、従順承知。

その中でも、

ひとつ先に進めたことが、嬉しかった…。

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