マタニティな日々と、ママの日々 ananが妊娠について学んだこと ananの妊婦なイラスト トップページへ戻る

ananにとって二度目の出産となった、暁希の出産記です。
風友の時よりも冷静に挑んた分、長くなってしまいましたが、
読んでいただければ嬉しく思います…。

  

    






6. 人工破膜


―時刻は午前9時半前。

再び先ほどと同じ台に寝ころぶと、

ほどなくして、院長先生の処置が始まった。

「楽にしてくださいね」

カチャカチャと器具を用意する音が怖くて、

あたしは、ゆっくりとお腹のチュッちゃんに手を当てた。

やがてすぐ…、
鈍く、強い痛みを感じる。

あたしは思わず顔を歪めたけれど、
これくらいの痛さで今から弱音を吐くわけにはいかなかった。

バルーンを入れてもらったら陣痛が強くなるんだから。

こんな痛みなんて比じゃないんだから…。

…自分に言い聞かせるように、そんな事を考えていると…、

「…うーん、バルーンが抜けちゃうな…」

先生がふいに洩らした。

どうやら、あたしの子宮口が予想以上に柔らかくなってきているので、バルーンが挟まらないらしい。

どうするんだろう…。

…先生が何度かやり直しをしている事は解ったので、

あたしも、痛みを我慢しながら先生の次の言葉を待った。

すると…、

「…破水させましょう」

先生は、あたしの不安を押さえ込むようにハッキリと言った。

「多分すぐに陣痛が来るからね。あと…、薬を出すので、指示通りに飲んで下さいね」

「はい…」

あたしは、考えるより先にとりあえず返事をした。

破水…。

チュッちゃんと羊水を包んでいる膜が、破られてしまう。

…もう、成り行きに任せるしかないと悟った。

先生がどのようにして処置をしているのかなんて全く判らなかったけれど、

次の瞬間、

あたしは、激痛に思わず腰を引いてしまった。

悲鳴のように、あたたかい羊水がどっと流れ出る。

…もう戻れない。

長い間チュッちゃんを守ってきた、貴重な羊水が流れ出てしまった…。

「大丈夫ですか?…ゆっくりでいいですよ…」

看護婦さんに気遣われながら台から降りると、

あたしは、痛さの余韻に少しぼうっとしながら陣痛室へと戻った。

「お帰り、どうだった…?」

…カーテンを開けると、
母は、あたしのベッドに戻って腰掛けていた。

どうやら、隣の妊婦さんにも旦那さんが付き添いに来てくれたみたい…。

「…痛かったよ…」

あたしはベッドにゆっくりと腰を下ろすと、母に一部始終を告げた。

羊水が流れ出た分、お腹がちいさくなったかな…と、
見たり、触ったりしてみたけれど、

今のところは、何の変化も感じられなかった…。


―10時半頃。

じわりじわりと…陣痛が再開していた。

間隔は、5〜7分。

あたしはベッドの上で女の子座りをしたまま、体勢を崩さずにいた。

なぜなら…、
陣痛に合わせて、羊水がシャー…と流れ出てしまう時があるからなんです…。
(ご存知の通り、陣痛の時は子宮がきゅう…っと収縮しているんです)

動いたら、それこそ大量に出てしまう気がして…。

「ちょっとまた、トイレ行ってくるね…」

あたしは、何度かトイレで確認をした。

けれど…、

中で便座に座った事で羊水が流れ出てしまったり、
(最後に水洗レバーに手をかけた時、なんとも複雑な気持ちになりました…)

あてていたナプキンに含まれていた羊水量の多さを知ると、更に不安になった。

…こんなに羊水が出ちゃったら、チュッちゃんは苦しくないのかな…。

別にチュッちゃんはお腹の中でエラ呼吸をしているわけではないのに、
あたしは異様に心配になってしまう。

看護婦さんに聞いてみたところ、

「赤ちゃんの頭で子宮口に栓がされている状態なので、大丈夫ですよ」

との事だったけれど、
(自分で思っているよりも、羊水はきちんと子宮の中に残っているらしい)

もしここまで来て、チュッちゃんに何かあったら…と、

そんなよからぬ事も考えてしまいました…。

…するとそんな時、

「…元気?」

ふいに、旦那さんが現れた。

…あたしはホッとする。

「…かざは?」

「来てるよ、…今来るんじゃない?」

…一晩離れていただけなのに、
妙に久しぶりな気がするのは、

あたしが、一晩中気を張っていたからかな。

「…ママ!」

そして…、廊下から元気のいい声が聞こえたかと思うと、

風友が、お義父さんに抱かれながら入ってきた。

「…かざちゃん…!!」

「ママ…!」

誰かしらが、風友の靴を脱がせてベッドにあげてくれる。

あたしは、しっかりと風友を抱きしめた…。

「会いたかったよ、かざちゃん…」

あたしが言うと、

「かざちゃんね、昨日からとってもいい子にしてたんだよ…」

お義母さんはゆっくりとそう言い、
心配ないからね…と、風友を誉めてくれた。

そして、旦那さんも付け加える。

「寝る時に少し『ママ』って泣いたけど…、頑張ってたよ、風友…」

…昨夜は、じぃじとばぁばと、みんなで並んで眠ったという。

あたしはなんだか、涙が出そうになった。

「そうだったんだ…、偉いね、かざちゃん…」

ニコニコとあたしに寄りかかる風友を、あたしはもう一度抱きしめた。

この子は…、
あたしが思うより、ずっと立派だったんだ…。

笑顔の裏で頑張ってくれているこの子のために、
あたしも頑張ろう。

サポートしてくれている家族もいる。

こんなに幸せな事なんてない…。

…ね、チュッちゃん…。


―その後、

風友と義両親は一旦産院を後にしたので、

旦那さんと母が、引き続き付き添ってくれる事になった。

…そして先ほど、

Aさんが、引き継ぎの時間になったので…と、最後にあたしに挨拶に来てくれた。

『頑張ってね』

と、言い残したAさんは、男の子ばかりの3児の母。

ありがとう、Aさん…。

…時刻は、刻々と確かに過ぎてゆく。

あたしの本当の闘いが、これから始まろうとしていた…。

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