マタニティな日々と、ママの日々 ananが妊娠について学んだこと ananの妊婦なイラスト トップページへ戻る

ananにとって二度目の出産となった、暁希の出産記です。
風友の時よりも冷静に挑んた分、長くなってしまいましたが、
読んでいただければ嬉しく思います…。

  

    






8. 分娩室へ


「分娩室の用意が出来たら呼びにきますね!」

助産婦さんはそう言って退室すると、

すぐに廊下から、

『わー…』

とゆうような、母と旦那さんの安堵の声が耳に届いた。

…母が、明るい表情で部屋に入って来る。

「あと少しだね、やっぱり一気に開いたね…!」

…そして旦那さんも。

「良かったね…」

緊張気味ながら、笑顔を見せてくれた。

その覇気のなさに、

『…もうすぐ産まれるんだよ、解ってる?』

あたしは思わず聞きたくなったけれど、

旦那さんなりに、思うことが沢山あるんだろうな…と、言葉を飲み込んだ。

「じゃあ…頑張ってくるね」

…分娩室の用意が整うと、

あたしは精一杯声を絞り、
自分に言い聞かせるようにそう言った。

そしてとうとう…、

あたしは陣痛の合間を待って、分娩室へと移動する。

待ち望んだ瞬間のひとつ。

けれど…、
体が前後左右に揺れて、うまく歩けない。

早く分娩台までたどり着きたいのに、
体は、別人のように言うことを聞かなかった。


―時計は、15時ちょうど。

風友の時もそうだったけれど、

分娩台に上がる直前に陣痛が来てしまい、戸惑った。

「…ゆっくり上がってくださいね、気をつけて…」

…痛みが去ると、

助産婦さんに気遣われながら踏み台を登り、分娩台になんとか寝転ぶ。

…そして、こちらも風友の時と同じ。

あんなに耐え難く感じた陣痛の痛みが、
分娩台に登った途端、和らいだように感じたんです…。

…あたしは、天井の大きな照明を睨む。

ついに、ここまで来たんだ…。

「…どうですか?いきむと陣痛が無くなりますか?…軽くいきんでみましょうか」

助産婦さんは、あたしの両足に青いビニールのカバーを掛けながらそう言う。

「…あと1cmで全開大になるので、いきんで(子宮口を)押し広げちゃいましょうね」

「…はい」

あたしは、言われた通りに陣痛を待って…、

…小さく、いきんでみた。

「………」

そして…、

………あれ、難しい…。

思わず戸惑った。

いきむと…、確かに痛みは無くなる。

でも、
こんなんじゃない。

風友を産んだ時は、
いきんだ時、もっと手応えを感じたはず…。

「……上手く、いきめないです…」

…あたしが首を傾げると、

助産婦さんは、

「息を洩らさないで、目を開けて、おなかを見るような気持ちでいきんでみてください」

…そう教えてくれた。

だけど…、

「………あ、あれ…?…」

今度は、上手くタイミングが掴めない。

…タイミングを教えてくれないのかな…と、
あたしは不安になった。

風友を取り上げてくれたAさんは、

『…せーの…、はい、いきんで!』

と、タイミングを教えてくれたのにな…。

「…用意出来たら、旦那さんを入れてあげてくださいー」

…助産婦さんは、看護婦さんに指示を出した。

「…旦那さん、立ち会い希望ですよね?」

あたしは、『はい』と頷いた。


…やがてすぐ、左手首に点滴が繋がれる。

「全開大になりましたよ、頑張りましょう」

助産婦さんの言葉に、あたしは軽く頷いた。

…あと少し。

…きっとあと少し。

だけど、どうしてだろう。

なぜかここに来て、

『産める』とゆう自信が、揺らいでいる…。


―分娩室に入ってから、15分程が経っていた…。

何度かいきんだものの、

相変わらずの手応えのなさに、あたしは困惑していた。

『二人目は全開になるとすぐに産まれちゃうよ!』

…友達の言葉を思い出す。

皆…分娩台に上がったらすぐに、
それこそ2〜3回いきんだら産まれちゃった!…なんて言っていたのに、

どうしてあたしは、こんなに手応えがないんだろう…。

…もっと、
死ぬ気でいきめば状況は変わるだろう…とは思うけれど、

割れるように痛い腰と、
いきんだ後の全身の疲労感が、

恐ろしい程にあたしの気力を奪った。

…その時。

「どうした、頑張れー!?」

誰かがあたしの頭を撫でた。

見ると…、

なんと頭上に、
この産院で医療事務をしている友達の姿があった。

「…どうしたの!?」

…あたしは心底驚いた!

「連絡もらったの。…飛んで来ちゃったよ!」

彼女は高校時代の友達。

いつも話が尽きなくて、頼れる存在なんだけど、

まさか…、
こうしてお産に立ち会ってもらう事になるなんて…!

…なにしろ、分娩台の上ではひどい格好。

いきむ顔も、きっと見られたものじゃないから、

あたしは少し戸惑ったけれど、

でも…、
とても心強く、嬉しかった。

「ありがとう…」

彼女も、男の子二人の母。

聞くと、
彼女はもちろん、助産婦さんも看護婦さんもこの産院で出産したらしく、

あたしは陣痛の合間に呼吸を整えながら、
その、ほのぼのとした会話に参加した。

…チュッちゃんを産もうとしているあたしを、

こうして、出産経験者の女性たちがサポートしてくれている。

あたしは、不思議な連帯感を感じていた。


…やがて、
旦那さんがハンディカムを持って分娩室に入って来る。

すると予想どおり、

「…あ、あれっ!?」

友達の姿に驚いた。

…だけどあたしは、心強い限り。

旦那さんと友達に見守られ、

母が部屋のすぐ外で祈っていて、

すぐに会える距離で、可愛い長男が待っている。

頑張れないはずがない!

「…腰、さすりますね」

…あたしが腰の痛さを訴えると、

助産婦さんの指示をうけて、看護婦さんが腰をさすってくれた。

けれど…、
さすってくれる看護婦さんの手には、仰向けに寝転がるあたしの体重がどうしてもかかってしまう。

「すみません…」

途絶え途絶えに謝ると、

看護婦さんは、平気ですよ…と、笑顔で返してくれた。

本当に申し訳なかったけれど、

あたしは、看護婦さんの笑顔に甘えるしかなかった。

自分に集中して、

一刻も早くチュッちゃんに会えることを祈りながら、

陣痛を待ち、夢中でいきんだ。

「…鼻から大きく息を吸って、赤ちゃんに酸素を送ってあげてねー」

助産婦さんからは、何度もこう注意された。

いきんだ後、
あたしはどうしても苦しさでハァハァと胸を上下させてしまう。

友達はそんなあたしの手を握ると、

「スー、ハー、スー、ハー…」

…と、呼吸をリードしてくれた。

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